
シンガポールからイスカンダル計画で再開発が進むジョホール・バル「ヌサジャヤ」地区へ車で移動
運転手さんを雇って、車でシンガポールの対岸にあるマレーシアのジョホール・バル(Johor Bahru / JB)まで行くことに。
ちなみに、僕がジョホールバルに行ったのは、2015年11月です。
ジョホール・バルはマレーシアの南端、シンガポールの対岸にある街です。
マレーシアでは首都クアラルンプールに次ぐ、第二の都市と言われています。
マレーシアの中では最南端に位置する街ですが、対岸にあるシンガポールの成長を受けて発展してきたようです。
1923年に「コーズウェイ(Causway Link)」と呼ばれる橋がシンガポールとジョホール・バルで結ばれ、車で行き来できるようになりました。
その後、「コーズウェイ」の渋滞解消のために、1998年に「セカンドリンク(Second Link)」と呼ばれる橋が建設されました。
現在、この2本の橋でジョホール・バルとシンガポールを行き来できるのですが、渋滞問題は未だに解消されていないようです。
道路が空いていれば、片道45分前後で行けるそうですが、この日は土曜日ということもあり、道がすごく混んでいました・・・。
なんと、行きがコーズウェイを通って90分、帰りがセカンドリンクを通って2時間もかかりました・・・。
イスカンダル計画
ジョホールバルに行く前に「イスカンダル計画」について知っておく必要があります。
「イスカンダル計画」とはざっくり言うと、ジョホール・バルのジャングルを切り開いて、シンガポールのように成功した街をマレーシア内にもう1つ作ってしまおうとするような巨大プロジェクトです。
香港の発展の恩恵を受けて成長した中国・深センをモデルにしているとも言われています。(香港の対岸にある深セン、シンガポールの対岸にあるジョホール・バル)
マレーシアは2020年までに先進国の仲間入りをするという目標があり、この「イスカンダル計画」が目標達成のカギとなっています。
「イスカンダル計画」は2006年にスタートし、2016年で開発10年目。2025年に完成を目指しています。
開発面積はシンガポールの約3倍(東京23区と同じくらい)と超大規模再開発です。
「イスカンダル計画」はジョホール・バルを5つのゾーンに分けてコンセプトを変えて再開発が行われるのですが、中心エリアと言われているのが、上の地図で青丸が付いている「ヌサジャヤ(Nusajaya)」地区です。
「ヌサジャヤ(Nusajaya)」地区では、教育・エンターテイメント・医療などの施設を海外から誘致し、住居やホテル、オフィスも充実させる予定です。
「ヌサジャヤ(Nusajaya)」にある代表的な施設には以下のものがあります。
- レゴランド(テーマパーク)
- パインウッド・イスカンダル・マレーシア・スタジオ(007やパイレーツ・オブ・カリビアンの撮影スタジオ)
- マルボロカレッジ(学校、英国キャサリン妃の母校)
- グレンイーグルス・メディニ・ホスピタル(病院)
さらに、ジョホール・バル州の州政府機関「コタ・イスカンダル」も旧市街から「ヌサジャヤ(Nusajaya)」に移転させました。
そして、2016年1月に「ヌサジャヤ(Nusajaya)」は「イスカンダル・プテリ(Iskandar Puteri)」という地名に変更することになりました。
「イスカンダル」の名前が地名に入ることにより、ここが中心エリアになるということが改めて伝わります。
「ヌサジャヤ(現イスカンダル・プテリ)」地区の中には、「メディニ地区」という経済特区があり、ここにオフィスを構えると、法人税が10年間免除になるという税制優遇政策もあります。
マレーシア政府は2006年当時に150万人だったジョホール・バルの人口を、イスカンダル計画完成予定の2025年までに300万人まで増やし、将来的には上の写真のような都市になることを目指しているそうです。
もし、この「イスカンダル計画」が予定通り進んだら、本当にもう1つのシンガポールができてしまいそうですね。
(※シンガポールの人口は2015年6月時点で554万人、東京都の人口は2016年7月時点で1362万人、マレーシア全体の人口は2013年時点で2995万人。)
ただ、マレーシアだけでこれほどの巨大プロジェクトを進められるワケもなく、海外から投資を呼び込んでいます。
「Iskandar Malaysia」のウェブサイトによると、2006年から2016年までの10年間で投資額が多いトップ10の国は以下の通りです。
- 中国(22.17 RM Bil)
- シンガポール(19.14 RM Bil)
- 米国(6.78 RM Bil)
- 日本(4.26 RM Bil)
- スペイン(4.18 RM Bil)
- ドイツ(2.28 RM Bil)
- オーストラリア(2.04 RM Bil)
- アラブ首長国連邦(1.90 RM Bil)
- インド(1.89 RM Bil)
- オランダ(1.88 RM Bil)
やはり、中国とシンガポールからの投資が多いようです。日本はアメリカに次ぐ4位で、中国の5分の1の額です。
ジョホール・バルの2011年から2014年の人口は以下の通りです。
- 2011年:167万6000人
- 2012年:174万人(前年比6万4000人増)
- 2013年:180万6000人(前年比6万6000人増)
- 2014年:187万4000人(前年比6万8000人増)
これをみると、だいたい毎年6万5000人ほど人口が増えているので、同じペースで増えていくと、イスカンダル計画が完成予定の2025年の人口は258万9000人になります。
- 2015年:193万9000人
- 2016年:200万4000人
- 2017年:206万9000人
- 2018年:213万4000人
- 2019年:219万9000人
- 2020年:226万4000人
- 2021年:232万9000人
- 2022年:239万4000人
- 2023年:245万9000人
- 2024年:252万4000人
- 2025年:258万9000人
目標の300万人より少ないですが、マンションやオフィス、ショッピングモールなども完成していくに連れて、人口も増えていくと思われます。
また、2018年にはシンガポールとジョホール・バルを結ぶ通勤鉄道が開業予定です。
さらに、マレーシアの首都クアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道(日本でいう新幹線)を2026年までに完成させることが両国で合意されていて、ジョホール・バルにも駅ができる予定です。
高速鉄道ができると、現在4時間かかる陸路の旅が、90分に短縮できるとか。
予定通りに計画が進むか分かりませんが、イスカンダル計画が成功するかどうかは、中国経済とシンガポールまでの交通利便性にかかっていると思いました。
中国でバブル崩壊のような経済危機が起こったら、イスカンダル計画の完成は大幅に遅れると思われます。
さらに、どんなにジョホール・バルが栄えても、結局はシンガポールありきなので、シンガポールとの交通利便性が悪いままだと、あまりジョホール・バルに住みたいと思う人は増えないと思います。
平日は税制優遇があり、オフィス賃料も安いジョホール・バルで働き、週末はエンターテイメントが充実しているシンガポールで遊ぶという需要はあると思いました。
ただし、移動に2時間もかかるようだと、せっかくの週末が移動で消耗するだけの週末になってしまいますから・・・。
電車でサクッと30分くらいで行き来できるようになるといいですね。
シンガポールからコーズウェイを渡ってジョホール・バルへ
さて、ジョホール・バルに向かって車を走らせます。
途中、カラフルなマンションが並ぶエリアが。
現地のシンガポール人が住む公団でしょうか?
シンガポールというと、ガラス張りのかっこい高層ビルを思い浮かべる人が多いと思いますが、実際にはこんな感じのレトロなマンションもたくさんあります。
「SINGAPORE CARS $500 FINE(シンガポールの車は500ドルの罰金)」とありますが、これはシンガポール在住の人がガソリン代が安いジョホールバルでガソリンを入れて帰ってきたら罰金500ドルということです。
ガソリン代が高いシンガポールではなく、ガソリン代が安いジョホールバルで給油する人が過去にたくさんいたのでしょうね。
ちなみに、シンガポールでは車は日本の2〜3倍と非常に高額です。
国土が狭いので、渋滞が起こらないように車を持つためのハードルを上げているのだと思います。
渋滞の経済損失って、すごいらしいですからね。
だいぶ混んできました。
ナンバープレートが「J」で始まる車はジョホールバルから来た車です。
ナンバープレートが「S」で始まる車はシンガポールの車です。
「コーズウェイ(Causway Link)」に乗る手前にある「Woodlands Checkpoint(ウッドランズ・チェックポイント)」です。
ここではバスで国境越えする人たちが並んでいました。土曜日ということもあり、すごい人です。
国境を越えるので、パスポートが必要になります。
「コーズウェイ(Causway Link)」橋に乗ると、目線の向こうにはマレーシアのジョホール・バルが見えてきます。
橋を歩いてジョホールバルに向かう人もいます。コーズウェイ橋は全長約1050メートル(約1キロ)あります。
この日は渋滞がすごかったので、歩いた方が早かったかもしれません。
ただ、暑いから汗だくになると思いますが・・・。
女性は日傘が必須ですね。
ジョホール・バルってこれからどんどん開発されていく街と聞いていたのですが、この景色を見て、「なんだか、子供の時に行った熱海っぽいな」と思ったのですが・・・。
ぱっと見、すごくのんびりした印象を受けました。
ジョホール・バルに到着、ここからはマレーシア
ジョホールバルに入りました。ここからは、マレーシアです。
シンガポールから国境を越えるまではすごい渋滞でしたが、ジョホール・バルに入ってからは、道は空いています。
コーズウェイの近くにあるマンション販売会場に連れてきてもらいました。
ジョホール・バルのシンガポール側の海沿い(オーシャン・フロント)にたくさんのマンションやショッピングモールが建つ予定だそうです。
マンション販売会場はすごく素敵な場所でした。セレブの匂いがしますね・・・。
なんとなく、バリ島のような印象を受けました。
なんでも、「コーズウェイ」橋周辺のジョホール・バルのオーシャン・フロントで、新しくこんなにたくさん高層マンションが建つらしいです。
ちなみに、緑に光っているのは、建設予定のホテルです。
数年後には、この辺りは別の街になっていそうな予感です。
右がシンガポール、左がジョホールバル、両者を結ぶコーズウェイ橋。
シンガポールを海越しで見渡せる立地に建つタワーマンション群ということですね。
海側の部屋に住めば、夜はシンガポールの夜景が見えるかもしれません。
マリーナ・ベイ・サンズ側から見たジョホールバル。
コーズウェイの麓に建つホテルは、完成したら泊まってみたいですね。
会場には中国人らしき人たちが、たくさんいました。
シンガポールもマレーシアもチャイナマネーがたくさん入って成長しましたからね。
ビックリしたのが、室内の看板に「buy 3 at the price of 2」と書いてあったことです。
これって、「3部屋買えば、2部屋の価格にディスカウト」という意味だと思うのですが、なんだかテレビショッピングみたいな売り方ですごいな〜と思いました。
でも、富裕層の中には3つくらいバーンと買っちゃう人もいるんでしょうね。
というか、最初は1部屋の予定だったけど、これ見て「あっ、得だ!」と思って、勢いで3部屋買っちゃう人がいるんでしょうね。。
売り手の思うがままですが、売り方としては「うまいなぁ〜」と思いました。
このエリアに建つ予定の「Princess Cove」というマンションの宣伝動画がYouTubeにあったので貼っておきます。
マンション販売会場から見たシンガポール方面。
右側に見える橋が、さっき車で渡ってきた「コーズウェイ」です。
シンガポールのジョホールバル側は、あまり建物は建ってなくて、ジャングルみたいな感じでした。
マンション販売会場を後にして、「ヌサジャヤ(現イスカンダル・プテリ)」地区に移動します。
建物はけっこう古い感じでしたね。
だいぶ賑やかな場所に来ました。
ホテルや銀行があります。この辺りは少しだけ栄えてましたね。
日本のイオンモールがあります。
ジョホール・バルではイオンモールは大人気みたいで、駐車場に入るためにたくさんの自動車が並んでいました。
マレーシアの公団住宅でしょうか?
日本の一軒家みたいな家が立ち並ぶエリアもありました。
どう見ても、日本の一軒家と変わらない見た目です。この写真だけ見たら、マレーシアにいるとは思えないですね。
ここはリンクハウスを建設中みたいです。
現地の人は、高層マンションよりもリンクハウスに住むことを好む傾向にあるそうです。
ヌサジャヤ地区に2008年に移転したジョホール・バル州の州政府機関「コタ・イスカンダル」です。
僕は車から降りずに、車内から外観を見ただけですが、「コタ・イスカンダル」は見学ツアーもあるそうです。
YouTubeにドローンで空撮した動画があったのですが、これを見ると、「コタ・イスカンダル」はかなり広いことが分かります。
◎Masjid Kota Iskandar Johor. Drone – Aerial View
ヌサジャヤ地区のショッピングモールに来ました。
ここでは車を降りて、ちょっとブラブラしてみることに。
「ヌサジャヤ(Nusajaya)」という地名は、2016年1月から「イスカンダル・プテリ(Iskandar Puteri)」という地名に変更になりましたが、このショッピングモールの目の前には「プテリ・ハーバー」という港があります。
ちなみに、「プテリ」とはマレー語で「王女」という意味です。
「プテリ・ハーバー」はすごく雰囲気がいいです。
シンガポールの富裕層の中には、ここまで船でジョホール・バルに来る人もいるそうです。
ただ、この辺りは土曜日だと言うのに、それほど人はいなかったですね。
イオンモールの方が人気のようです。
ショッピングモール内も人はまばらで、空室になっている部屋もありました。
土曜日でこの状態ですから、平日はもっと空いているのではないでしょうか?
ショッピングモール近くの高層ビルの屋上から撮ったジョホールバルの風景です。
2階建ての一軒家を大量に作っています。
さっき見た「コタ・イスカンダール」が見えます。
上から見て初めて、真ん中に星のマークがある大きな庭があったことを知りました。
それにしても、ジャングルを切り開いて新しい街を作っている最中みたいな感じで、まだ周囲には何もありません。
今は緑の方が多いですが、5年後は建物ばかりになっているのではないでしょうか?
至るところで工事しています。
オーシャンビューの高層マンションも建設中です。
さらに車で「ヌサジャヤ(現イスカンダル・プテリ)」地区の内陸に移動します。
ここはレゴランド(LEGOLAND)です。
2012年9月に世界で6番目のレゴランドとしてオープンしました。
2016年には7番目のレゴランドがドバイに、そして、2017年4月に8番目のレゴランドが日本の名古屋にオープン予定です。
このあたりから、天気が危うくなってきて、今にも雨が振りそうです。
高層ビルも建っていました。マンションかホテルですね。
ジョホールバルは本当に至る所で工事中でしたね。
ジャングルを切り開いて、新しい都市を作るってこんな感じなんでしょうね。
3年ごとくらいに訪れて、変化を楽しみたい街の1つですね。
ジョホール・バルからセカンドリンクを渡ってシンガポールへ戻る
さて、シンガポールへと戻ります。
今度はセカンドリンクを通ってホテルに戻ろうとしたのですが、すっごい渋滞です・・・。全く、前に進みません。。
おまけに、途中からスコールが降ってきました。。
シンガポールとジョホールバルは、距離的には3キロ程度しか離れていませんが、現状では橋が2つしかないので、渋滞がハンパないです。
この日は土曜日だったせいかもしれませんが、行きに90分、帰りは途中から雨が降ったせいか、2時間くらい移動時間をとられてしまいました。。
ガイドブックには「車で30分〜1時間ほど」と書いてあったのですが、週末は渋滞がひどくなるようなので、2時間くらいみておいた方がいいかもしれません。
また、平日でも朝と夕方の通勤時間には渋滞するそうです。
車以外だと、2015年7月にシンガポールの「ウッドランズ(Woodlands)」とジョホールバルの「JBセントラル」を結ぶシャトル電車(Shuttole Tebrau)が開通されました。これだと、片道たったの5分で行けます。しかし、1日7便と本数が少ないです。
2018年にはシンガポールとジョホール・バルを結ぶ通勤鉄道が開通予定なので、それまでは渋滞問題は解消されないと思われます。
ただ、あくまでも開通予定なので、もっと遅れる可能性は十分にあると思います。
フォレストシティ
イスカンダル計画も膨大なプロジェクトですが、ジョホール・バルのすぐそばでは「フォレストシティ」という埋立地で作る新しい人工島のプロジェクトもあるようです。
中国のデベロッパーのよるプロジェクトのようですが、規模感がハンパないです。まるで、SF映画に出てきそうな都市です。
これこそ、ゼロから最先端都市を作るという目論見です。
おもしろいなぁ〜と思ったのが、車は地上を走らせないで、地下を走らせるというコンセプトですね。
車が地上を走らなければ、空気もきれいだし、騒音も軽減するし、自動車と歩行者の交通事故も起こりません。
この「フォレストシティ」が本当に完成したら、ぜひ遊びに行きたいと思います。
地図・関連リンク
- Iskandar Malaysia
- 10 YEAR PROGRESS REPORT 2006 – 2016 – Iskandar Malaysia
- Iskandar Malaysia – Wikipedia
- Official Portal of Johor Bahru City Council (MBJB)
- MYIskandarMalaysia – YouTube
- 三井物産株式会社:マレーシア イスカンダル計画
- R&F Princess Cove | Official Princess Cove Website of R&F Properties in Tanjung Puteri
- Forest City CGPV Official Web Site | Mega development project in Johor Bahru, near the 2nd Link Access to Singapore
- マレーシア・ジョホールバルの住宅市場~供給過剰のイスカンダル計画にさらなる巨大プロジェクトが追加~ | ニッセイ基礎研究所
- マレーシア第2の都市・ジョホールバルが「廃墟化」するこれだけの理由=午堂登紀雄 | マネーボイス
- 「拡大シンガポール」に商機:日本経済新聞(2017/9/1)
- マレーシア、大型開発がけん引する成長 南部ジョホール州、将来は淘汰も:日本経済新聞(2017/10/14)
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