イアン・シュレーガー(Ian Schrager)がプロデュースしたブティックホテルまとめ

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「デザインホテルの先駆け」と言われている「モーガンズニューヨーク(MORGANS NEW YORK)」をプロデュースしたのは、イアン・シュレーガー(Ian Schrager)とスティーブ・ルベル(Steve Rubell)の2人ですが、ここではイアン・シュレーガーにフォーカスしてみたいと思います。

というのも、スティーブ・ルベルは「モーガンズニューヨーク(MORGANS NEW YORK)」が開業した5年後の1989年7月25日に45歳という若さでエイズで亡くなっているからです。

一方、イアン・シュレーガーは2015年7月19日で69歳になりますが、未だに現役でホテルプロデュースをしています。

モーガンズニューヨーク(MORGANS NEW YORK)のオープンが1984年なので、今年(2015年)でホテリエとして31年目を迎えます。

イアン・シュレーガーがプロデュースしてきたブティックホテル一覧

彼がこれまで創ってきたブティックホテル(デザインホテル)は、いまだに世界中のホテルから見本とされ続けています。

そのせいか、イアン・シュレーガーがテレビのインタビュー番組に出ると、「Pioneer of the boutique hotel(ブティックホテルの先駆者)」などと紹介されたりしています。

そんなわけで、「イアン・シュレーガーが過去に創ってきたホテル、そして現在企画中のホテルを知ることで、過去〜現在、そして未来のホテルトレンドを垣間見ることができるのではないか?」と思いました。

個人的にすごく興味のあることなので、いったんここでイアン・シュレーガーがプロデュースしたホテルをまとめたいと思います!

2つのナイトクラブをプロデュースしてヒットさせる

イアン・シュレーガー(Ian Schrager)はホテルビジネスを始める前、1977年にナイトクラブをプロデュースしています。

このナイトクラブが伝説のディスコと言われている「Studio 54」です。

「Studio 54」の何が伝説かというと、まず出入りしていた客に有名人(セレブリティ)が多いという点があります。

アンディ・ウォーホル、サルヴァドール・ダリ、ミック・ジャガー、マイケル・ジャクソン、ジョン・トラボルタ、デヴィッド・ボウイ、エリザベス・テイラー、ダイアナ・ロス、グレース・ジョーンズ、エルトン・ジョン、ティナ・ターナーといったアーティストや俳優・女優、ミュージシャンに始まり、イヴ・サン・ローラン、カルヴァン・クライン、トム・フォード、マーク・ジェイコブスといったデザイナーまでが遊びに来ていました。

有名人が出入りするので、スキャンダルも多々起こり、マスコミにも取り上げられ、さらに話題に。

といっても、誰でも入れるわけではありません。

「ヴェルヴェット・コード」と呼ばれる厳しい入場チェックがあり、イアン・シュレーガーやスティーブ・ルベル自身が入口に立って入場者を選別していました。

選ばれた人だけが集った「Studio 54」は一気に音楽やファッション、アートの流行発信地に。

YouTubeには「Studio 54」のドキュメンタリービデオがあります(英語)。

1998年には、そのまま「Studio 54」というタイトルで映画化もされています。(日本では1999年6月に公開)

Studio 54

「Studio 54」のオープンから2年後の1979年、イアン・シュレーガーとスティーブ・ルベルは脱税や司法妨害の容疑で起訴され、1980年1月に3年半の懲役と2万ドルの罰金の判決を下されます。

そして、二人は1980年4月に投獄され、1981年1月に釈放。

釈放された年に「Studio 54」を475万ドルで売却します。

その後、1985年に大型ナイトクラブ「Palladium(パラディウム)」をオープン。

「Palladium」ではジャン=ミシェル・バスキア(Michel Basquiat)やキース・ヘリング(Keith Haring)といった当時の最先端を行くアーティストとコラボし、スクリーンを使ったビデオインスタレーションも行いました。

イアン・シュレーガーは店内のデザインや建築がその場に与える大きさを理解していたので、クラブの内装にも徹底的にこだわます。

彼はこの「Palladium」での活動を通して、有名な建築家やアーティスト、デザイナーとのコネクションを築き上げていきました。

その中には、後に多くのブティックホテルを一緒に手がけることになるフランス人デザイナーのフィリップ・スタルク(Philippe Starck)もいます。

Morgans Hotel Groupでホテルビジネスに参入

1980年代に入ると、イアン・シュレーガーとスティーブ・ルベルの興味はナイトクラブからホテルビジネスへと向かい、「Morgans Hotel Group」を創業します。

彼らがプロデュースするホテルは既存の泊まるだけのホテルではなく、「Studio 54」や「Palladium」で培ったデザイン性やエンターテイメント性、社交性を強く打ち出した新しいホテルとなり、ホテル業界に革命を起こします。

MORGANS NEW YORK(Murray Hill, NYC / USA)

1984年、マディソン街沿いに「モーガンズニューヨーク(MORGANS NEW YORK)」をオープンし、すぐさま人気ホテルに。

住所:237 Madison Avenue, New York

モーガンズニューヨーク(MORGANS NEW YORK)

イアン・シュレーガーは初めてのホテルビジネスを成功させるだけでなく、「ブティックホテル(Boutique Hotel)」というコンセプトを世の中に広めます。

そして、「モーガンズニューヨーク(MORGANS NEW YORK)」の成功を受け、さらに新しいホテルに着手します。

Royalton Hotel(Midtown, NYC / USA)

1988年10月、ニューヨークのミッドタウンに「ロイヤルトンホテル(Royalton Hotel)」をフィリップ・スタルクのデザインでオープン。

住所:44 West 44th Street, New York

ロイヤルトンホテル(Royalton Hotel)

Paramount Hotel(Times Square, NYC / USA)

1990年、ニューヨークのタイムズ・スクエアに「パラマウントホテル(Paramount Hotel)」をオープン。(デザイナー:フィリップ・スタルク)

住所:235 W 46th Street, New York

パラマウントホテル(Paramount Hotel)

lobby socializingとcheap chicというコンセプト

「MORGANS NEW YORK」「Royalton Hotel」「Paramount Hotel」と3つのホテルを手掛ける中で、イアン・シュレーガーは「lobby socializing」と「cheap chic」というコンセプトを世に広めました。

「lobby socializing」とは、「ホテルのロビーが宿泊客だけでなく、地元のニューヨーカーも一緒に楽しめる場所になる」というコンセプトです。

ホテルのロビーを近隣で働いている人や住んでいる人もついつい立ち寄りたくなるような魅力的な空間、社交の場にすることによって、宿泊客と地元住民が交わる場所になります。

まさに、今のエースホテル(ACE HOTEL NEW YORK)のロビーは、イアン・シュレーガーが提示した「lobby socializing」というコンセプトを形にしたロビーだと思います。

ホテルに人がたくさん集まるようになれば、その近隣エリアにもレストランやショップが増えて、街が栄えていくというメリットもあります。

1つのホテルの登場によって、寂れた街が人の流れを取り戻すことだってあるのです。

「lobby socializing」というコンセプトを導入することにより、イアン・シュレーガーはホテル業界の常識をぶち壊しました。

そして、この「lobby socializing」を支えることになるのが、「cheap chic」というコンセプトです。

「cheap chic」とは「スタイリッシュで最先端の場所に、手の届く金額で誰でも立ち寄ることができる」というコンセプトです。

つまり、お金持ちでなくても、ゴージャスでオシャレな空間を楽しめるということですね。だから、より多くの人が集まってきます。

イアン・シュレーガーはさらにホテルプロデュースを続け、今度はニューヨークから飛び出します。

Delano Hotel(Miami / USA)

1995年、マイアミビーチに「デラノホテル(Delano Hotel)」をオープン。(デザイナー:フィリップ・スタルク)

住所:1685 Collins Avenue, South Beach, FL 33139

デラノホテル(Delano Hotel)

Mondrian Hotel(LA / USA)

1996年、ロサンゼルスのウエストハリウッドに「モンドリアンホテル(Mondrian Hotel)」をオープン。(デザイナー:フィリップ・スタルク)

住所:8440 Sunset Boulevard, Los Angeles, CA 90069

モンドリアンホテル(Mondrian Hotel)

イアン・シュレーガーがプロデュースした「デラノホテル(Delano Hotel)」と「モンドリアンホテル(Mondrian Hotel)」は「Urban Resort」として世界に絶賛され大成功しました。

Hudson Hotel(Midtown, NYC / USA)

その後も「cheap chic」というコンセプトをさらに磨きをかけ、「hotel as lifestyle」を完全に実現したのが2000年にニューヨークのセントラル・パークの近くに創った「ハドソンホテル(Hudson Hotel)」です。(デザイナー:フィリップ・スタルク)

住所:356 West 58th Street, New York

ハドソンホテル(Hudson Hotel)

「ハドソンホテル(Hudson Hotel)」は週末になるとホテルのロビーから中庭までクラブのラウンジのようになり、DJが音楽を流し、多くの人がパーティーを楽しむ場となります。

St Martins Lane Hotel(London / the United Kingdom)

イアン・シュレーガーはBoutique Hotelの海外進出も計ります。

1999年、ロンドンに「セント マーティンズ レーン ホテル(St Martins Lane Hotel)」をオープン。(デザイナー:フィリップ・スタルク)

住所:45 St. Martin’s Lane, London

セント マーティンズ レーン ホテル(St Martins Lane Hotel)

Sanderson Hotel(London / the United Kingdom)

2000年4月、ロンドンに「サンダーソンホテル(Sanderson Hotel)」をオープン。(デザイナー:フィリップ・スタルク)

住所:50 Berners Street, London

サンダーソンホテル(Sanderson Hotel)

Clift Hotel(San Francisco / USA)

2001年、サンフランシスコに「クリフトホテル(Clift Hotel)」をオープン。(デザイナー:フィリップ・スタルク)

住所:495 Geary Street, San Francisco, CA

リフトホテル(Clift Hotel)

Shore Club South Beach Hotel(Miami / USA)

2002年、マイアミビーチに「ザ ショアクラブ サウスビーチ(Shore Club South Beach Hotel)」をオープン。(デザイナー:デイヴィッド・チッパーフィールド)

住所:1901 Collins Avenue, South Beach, FL

ザ ショアクラブ サウスビーチ(Shore Club South Beach Hotel)

Ian Schrager Companyを設立

2005年、イアン・シュレーガーは「Morgans Hotel Group」を売却し、「Ian Schrager Company」を設立し、ホテルだけでなくレジデンス(マンションなどの住居)のプロデュースも手掛けるようになります。

Gramercy Park Hotel(Gramercy, NYC / USA)

2006年9月、歴史と格式はあるけど古さも否めない「グラマシーパークホテル(Gramercy Park Hotel)」を画家のジュリアン・シュナーベルとコラボしてリノベーションして、デザインホテルに変身させます。

住所:2 Lexington Avenue, New York

グラマシーパークホテル(Gramercy Park Hotel)

「グラマシーパークホテル(Gramercy Park Hotel)」は1925年に開業。

ハンフリー・ボガードが結婚式を挙げ、ジョン・F・ケネディが若い頃に数ヶ月間暮らし、ローリング・ストーンズが最初のアメリカツアーの時に滞在し、ボブ・デュランやビートルズ、クラッシュ、ボブ・マーリー、U2が滞在し、マドンナが屋上のテラスでたむろしていたなど、多くの著名人に愛されたホテルです。

ちなみに、「グラマシーパークホテル(Gramercy Park Hotel)」の目の前にある「グラマシーパーク」は年間使用料を払って鍵を渡された周辺住民しか入ることができないマンハッタンで唯一のプライベートパークです。

通常では鍵を持っている近隣住民しか入れませんが、「グラマシーパークホテル(Gramercy Park Hotel)」の宿泊客はこの鍵を借りて、グラマシーパークに入ることができるという特典があります。

イアン・シュレーガーはすでにグラマシーパークホテルの権利は売却しており、このホテルとの提携は終了しているので、現在のグラマシーパークホテルはイアン・シュレーガーの色は薄くなっている可能性があります。

PUBLIC Chicago(Chicago / USA)

イアン・シュレーガーは「PUBLIC」という新しいブランドのホテルに着手します。

「PUBLIC」は今までのブティックホテルに比べて、よりラグジュアリーで落ち着いた雰囲気となっています。

2011年10月、シカゴに「パブリック シカゴ(PUBLIC Chicago)」をオープン。

住所:1301 North State Parkway, Chicago, IL 60610

パブリック シカゴ(PUBLIC Chicago)

マリオットと組んで「EDITION Hotels」ブランドに着手

さらに、イアン・シュレーガーはホテル業界大手のマリオット・インターナショナル(Marriott International)とパートナー契約を組み、新しいホテルブランド「EDITION Hotels」に着手します。

マリオットのようなチェーンホテルとは真逆の個性的なホテルを創ってきたイアン・シュレーガーが「ブティックホテル」の次のステージとして、よりラグジュアリーな新しいホテルブランドに取り組みます。

世界規模で展開し、ホテル運用のノウハウと大資本を持ったマリオットというパートナーと組むことで、今までプロデュースしてきたブティックホテルとは、またひと味違ったホテルができることに期待です!

The London EDITION(London / the United Kingdom)

2013年秋、イギリスのロンドンに「ロンドン エディション(The London EDITION)」をオープン。

住所:10 Berners Street, London, England

ロンドン エディション(The London EDITION)

The Istanbul EDITION(Istanbul / Turkey)

2013年、トルコのイスタンブールに「イスタンブール・エディション(The Istanbul EDITION)」をオープン。

住所:Buyukdere Cad. No: 136, Levent, Istanbul, Istanbul, 34330

イスタンブール・エディション(The Istanbul EDITION)

The Miami Beach EDITION(Miami / USA)

2014年秋、フロリダのマイアミビーチに「マイアミビーチ エディション(The Miami Beach EDITION)」をオープン。

住所:2901 Collins Ave, Miami Beach, FL, 33140

マイアミビーチ エディション(The Miami Beach EDITION)

The New York EDITION(New York City / USA)

2015年、ニューヨークのマディソン・スクエア・パークの側に「ニューヨーク エディション(The New York EDITION)」をオープン。

住所:5 Madison Avenue, New York(24th Street and Madison Avenue)

マイアミビーチ エディション(The Miami Beach EDITION)

さらに今後、EDITION Hotelは続々と世界にオープン予定です。

◎2016年:
・中国の三亜(Sanya, China)
・タイのバンコク(Bangkok, Thailand)
・インドのグルガーオン(Gurgaon, India)

◎2017年:
・アブダビ(Abu Dhabi)
・中国の上海(Shanghai, China)
・中国の武漢(Wuhan, China)
・ニューヨークのタイムズスクエア(Times Square)

◎2018年:
・ロサンゼルスのウエストハリウッド(West Hollywood)

◎2019年:
・インドネシアスのパリ(Bali, Indonesia)

【追伸】2020年、日本にもエディションホテルが誕生

2017年7月に森トラスト株式会社が、2020年春〜夏に東京の虎ノ門と銀座に「エディションホテル」を開業すると発表しました。

とうとう、日本にもエディションホテルが誕生します。しかも、2個同時に。

詳細は以下の通りです。

東京エディション虎ノ門 東京エディション銀座
所在地 東京都港区虎ノ門四丁目24番6ほか(地番)東京ワールドゲート内 東京都中央区銀座二丁目8番15
階数 地上31~36階 地上13階
客室数 約200室 約80室
付帯施設 レストラン、バー、フィットネス、プール、スパ レストラン、ロビーバー、ルーフトップバー、フィットネス
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COMMENTS

MK

はじめまして!今NYでのホテル探しをしているところでここを見つけました。
すごく詳しく書かれていて参考になります。
NYには何度か行っているのですが、今までは格安のアパートメントホテル(日本人経営)を利用していました。
今回もそこにしようと思っていたのですが、閉鎖したのかHPがなくなっていて、その他のところも条件が変わったりして、
今回は普通のホテルにしようかと思っています。
今のところモーガンズが第一希望ですが、その他の泊まられたホテルも情報お願いします。

tiger

MKさん

はじめまして!

NYはホテルも観光地の1つと言っていいと思うので、格安じゃないホテルに泊まることで、より旅の充実度が増すと思われます。

僕が今回のNYの旅で泊まったホテルは全部で5つなのですが、すでに記事に書いたエースホテルモーガンズはオススメできます!

他にはパレスホテルWホテルも泊まりましたが、こちらもオススメできますね。

WホテルはNYに数箇所ありますが、イアン・シュレーガーのブティックホテルに影響を受けているというか、さらに今っぽい感じかもしれません。ただ、有名になりすぎて、宿泊客のレベルはそれほど高くない印象も受けました。

ホテルに関してはこんな感じですね。ただ、映画と一緒で好みがあると思うので、僕の言っていることは参考程度にして、MKさんの直感を信じた方が自分に合ったホテル選びができるかもしれません。

時間がとれたら、残りの3つのホテルの記事も書きたいと思います!

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